流れに掉さす
【漢字】流れに掉さす
【読み】ながれのさおさす
【意味】流れを止めたり、流れに逆らうと間違って認識されているが、棹とは船頭が舟を進める道具で、正しくは川の流れに掉をさして舟を勢いに乗せることから、順調に物事が進む様子を言う。
【例文1】流れに掉さす人生を送れて幸せだ。
【例文2】このまま流れに掉さして彼女にプロポーズする。
【例文3】結婚を機に流れに掉さす。
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「流れに掉さす」万葉人
「流れに掉さす」とは「掉を使って流れを下るように、物事が思うように進んでいくこと」です。掉とは船を進めるのに使う長い棒のことで、古くは枝を取り払った竹の幹で作られていました。掉が長い棒という認識から、たんすや長持ちを担いで運ぶ時に用いる長い棒も掉と言いますし、旗を通して掲げる長い棒も掉ですね。そこから、たんすや長持ちも一掉、二掉と数えますし、旗も掉が単位となっています。掉物と言われる和菓子、羊かんや州浜も一掉、二掉で数えます。とはいえ、羊羹は一度切ってしまえば、一切れ、二切れですが。「掉さす」という言葉がいつ頃から使われていたかというと、万葉集の巻の十八に載っている和歌に出てきております。
「4061 堀江より水脈みを引きしつつ御船さす賤男しづをの伴は川の瀬申せ」「4062 夏の夜は道たづたづし船に乗り川の瀬ごとに掉さし上れ」で、前の歌は掉は出てこないのですが、この2首は「右の件の二首歌は、御船綱手を以ひきて江より泝のぼり遊宴うたげせる日作めり。伝へ誦よむ人は、田邊史福麿なり。」と万葉集に書かれていることから、同じ人が詠んでいることがわかる歌なのです。大伴家持が越中富山へ赴任していた時に、知人か友人が宴で楽しく酔い船で帰途に着いた様子を詠んだと思われます。ほろ酔い加減で川風に吹かれながら、船で帰るのはさぞや気分の良いことだったでしょうね。