白髪三千丈
【漢字】白髪三千丈
【読み】はくはつさんぜんじょう
【意味】長年の悲しみや心配事が重なって髪が白くなり、長く伸びたと嘆く。
【例文1】白髪三千丈だったけど、金婚式を迎えられたのも家族のお陰だ。
【例文2】白髪三千丈でひ孫も見れて幸せだ。
【例文3】先も長くはないのに独り身の息子の事が白髪三千丈。
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白髪三千丈について思うこと
「白髪三千丈」という言葉を聞いて思い出すのは99歳まで生きた私の祖母のことです。祖母は大正生まれで貧乏な農家に嫁に来ました。子どもは10人いました。そのうち3人は幼少のころに食中毒で死亡しています。祖母は商売ヘタな祖父の代わりに、田舎の雑貨屋を切り盛りしていました。米の販売やタバコの販売、障子紙などを担いで列車に乗って配達まで行っていました。そして私の父が始めた漬物製造の仕事を私の母と行い、夕方からは私の叔父、叔母、兄弟を含めた家族10人の食事の用意までするという大変なことを行っていました。85歳を過ぎたあたりから祖母の兄弟が亡くなり始めて、葬儀のたびに泣いている祖母の姿がありました。6歳離れた祖母の妹が亡くなった時には、食欲もなくなるほど落ち込んでいました。90歳半ばころには兄弟全員が亡くなってしまいました。そして自分の7番目の息子が60歳で亡くなった時には、見ている周りも心配するほど元気が無くなっていきました。そのうちに痴呆の症状があらわれ、施設や病院を転々とするようになりましたが、逆に痴呆になったおかげで誰かが亡くなって泣いたり落ち込んだりすることはありませんでした。長生きするということはありがたいですが、「白髪三千丈」を身をもって知ることになるのだと祖母を見ていて思いました。
「白髪三千丈」は李白の誇張
「白髪三千丈(はくはつさんぜんじょう)」とは李白の五言絶句「秋浦歌」の冒頭部分に出てくる言葉です。「長年の憂いが重なり、白髪が非常に長くのびることを誇張した表現。心に憂いや心配事が積もることのたとえ」です。ちなみに三千丈とはおよそ9キロメートルですから、誇張も誇張なのですが、それほどの苦労をしたということ。李白は天才的な詩人で「詩仙」とも呼ばれていますが、最近のアニメ映画にもなった森見登美彦による小説「夜は短し歩けよ乙女」の中でも、李白は高利の金貸しや偽電気ブランの卸元などをやっている富豪の老人として登場します。「電車」と称する三階建ての巨大な自家用車を所有し、自由奔放に大酒を呑み、行動していますが、李白風邪と呼ばれる(おそらくインフルエンザ)によって、主人公の大学生と「黒髪の乙女」との恋を大きく進展させることになります。実際の李白も若い頃、遊侠の輩と付き合いがあったり、湯水のように大金を使ったり、道士と交流したりと自由奔放な生活をしています。42歳の時に長安へ出て賀知章の目にとまり、やがて玄宗皇帝に詩才を認められて官吏となりますが、若い頃の奔放さは留まるところを知らず、酒が原因で長安を追放されます。晩年は各地を転々とし、牢に繋がれるなど不運に見舞われます。その時の苦労を詠んだのがこの詩なのです。