舟に刻みて剣を求む

【漢字】舟に刻みて剣を求む
【読み】ふねにきざみてけんをもとむ
【意味】古い考えやしきたりにこだわり、時代の移り変わりに気付かない。
【例文1】舟に刻みて剣を求むで古い考えでは現代についていけない。
【例文2】舟に刻みて剣を求むが廃業に追い込まれていく。
【例文3】昔堅気で舟に刻みて剣を求む。

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「舟に刻みて剣を求む」と商道徳

「舟に刻みて剣を求む」は意味は「時勢の変化に気づかず、いつまでも古いしきたりにこだわっていること」です。中国戦国時代の「呂氏春秋」に記されている故事です。その故事は楚の国の人に長江を渡る人がいました。その剣が舟から水中に落ちてしまいました。慌ててその舟の船端に目印をつけ、「ここに私の剣が落ちた」と言いました。舟が泊まりました。男は船の目印をつけたところから、水中に入って剣を探しました。しかし、すでに舟は動いてしまっています。剣は動いていません。落とした剣を探すのにこのような方法をとるのはなんと間違っているのではないだろうかというものです。こんなバカげたこと、するわけないと思いますよね。でも、これは当事者ではないのです。第三者からの視点です。古い慣習にとらわれていることは色々あると思います。例えば、昔はたばこやお酒を販売するのは許可制で、距離基準というものが明確にあり、その距離を守らなければ店を開くことはできませんでした。だから守られていました。でも今は、昔からのたばこやさんがあっても、近所にコンビニエンスストアができればたばこは当然のように扱うのです。24時間営業しているほうが利便性が高いとか、駐車場があるなどの理由でそちらにお客が流れて既存店が廃業した、そんな話を耳にすると可哀そうにと思う反面、競争原理が働いたのだ、商道徳はもうないのだと諦観する自分もいるのです。これも「舟に刻みて剣を求め」ているのでしょうかね。

舟に刻みて剣を求むを使う場面はあるのでしょうか

「舟に刻みて剣を求む」は、紀元前239年に出来た中国の古い書物「呂氏春秋」の寓話に由来します。
川を舟で渡る際に剣を誤って落としてしまった男が、舟のへりに目印を刻んでそこから川底を探したけれど剣は見つからなかったという話です。
剣を落としたのは川の途中、探し始めたときには既に向こう岸に着いているのですから見つかるはずもありません。
状況の変化を考慮せずそれまで通りの行動をする愚かしさを表現する場合などに使われる言葉ですが、使い勝手が良いようには思えません。
古文の授業などでこの寓話を知っていなければ全く意図が伝わらず、なにやら難しいことを得意げに語っているなと思われるのかオチです。
無理してクドクドと寓話の内容まで説明したところでさらに胡散臭い人間に思われることでしょう。
古臭い言い回しを使うことに固執するあまり、自分の言いたいことが全く相手に伝わらない。
まさに舟に刻みて剣を求むをその場で体現しているような行動ではありませんか。
言葉は本来的に意思を伝えるための手段であって、難解な技巧を凝らして得意になるものではないということです。
状況に応じて行動するべきと伝えたいなら、そのまま分りやすく伝えるのが一番でしょう。