暖簾を下ろす

【漢字】暖簾を下ろす
【読み】のれんをおろす
【意味】店先にかかっている暖簾をしまうことは、店じまいや廃業を意味する。
【例文1】後継ぎがおらず暖簾を下ろす。
【例文2】経営難で暖簾を下ろす。
【例文3】どうやら暖簾を下ろす時がきたようだ。

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「暖簾を下ろす」で思うこと

私は24歳の時に青果卸業を親から受け継いで30年間やってきましたが、先日廃業しました。いわゆる「暖簾を下す」ということを体験したわけです。
青果卸業というのは青果市場の競りにおいて、野菜・果物の品質や鯵を一瞬で見分ける才能が必要です。例えば西瓜は、つるの産毛の色やお尻付近の形と色付き具合、叩いた音で熟れているかどうか、実が柔いのか固いのかを瞬時に判断しなければなりません。そして競りが終われば野菜や果物をトラックに積んでお店に卸すこととなります。お店、店で客層が異なり、固い身の西瓜が好きなお店または柔らかい身の西瓜が好きなに分かれるため、それに応じて西瓜を振り分けます。野菜に関しても同様で、ここは熟したトマトが売れるお店またはここはまだ青いトマトが売れるお店というものがあります。
しかし、近年は大型スーパーが進出して、私たちのような卸業者を利用せずに市場から直接青果物を仕入れるという形に変わってきました。市場の職員はパートやアルバイトが大型スーパーに品物を運んでいるだけなので、その品物の情報に関してはお店側に伝わることはありません。西瓜はただの西瓜で、身が固いのか柔らかいのかお店の担当者は知りません。
現在の日本では、私だけでなくその他の専門職がどんどん「暖簾を下す」状態になっていると思います。でも「暖簾を下す」事で、失われるものがあることはすごく残念です。

暖簾を下ろす、現代風に言えばシャッター街になる

原因が少子高齢化かドーナツ化現象かは不明ですが、駅前の大通りに面した店が次々潰れてシャッター街になっている地域は少なくないでしょう。
暖簾を下ろすの意味には、その日の営業を終了する以外に、店を畳んで事業撤退するという意味もあります。
ひとたび経営が悪化すれば、雪崩れるように右肩下がりに売り上げは下がり続け閉店まで一直線となります。
新規に開店して間もない店ですら、思うように売り上げが伸びなければ傷が小さいうちに早期撤退するのも当たり前。
いくら歴史ある老舗でも、生き残るための工夫を怠れば、あっという間に客足は遠のきます。
駅前の一等地に店を構えることは、ある意味ステータスと言えなくもないですが、それに見合った商売が出来ない店が多すぎます。
現代社会において自動車での移動は当たり前、なので駐車料金が発生するような駅前の店舗は余程の用がなければ訪れる人はいないでしょう。
にもかかわらずプライドを捨てきれずに殿様商売を継続する、中世の没落貴族を見るようです。
しかもそれが経営者はもとより従業員まで危機感も抱かずに続けられるのですから困りものです。
いずれ対処不能な額の借金を抱えて倒産するのですから、潔く早期に暖簾を下ろして欲しいと心から願います。